VOICES

ACEオンライン(PKU) 2024秋

観光学部 樋渡 花菜さん

自己理解とアイデンティティの再考~自己と他者を見つめて~

「ACEパートナー大学オンライン(PKU)」は、Chinese Traditional Identity and its Modern Transformationをテーマとして掲げ、パートナー大学の学生と共に少人数で学び合える貴重な機会でした。授業では、儒教や家族関係、社会的秩序など、中国社会の変遷やアイデンティティの形成について深く掘り下げました。受講のきっかけは、シラバスの1行目に書かれていた「Who are Chinese? How did Chinese people think about themselves?」という言葉に強く惹かれたことでした。2023年から1年間のマレーシア留学を通して、多くの友人に恵まれました。様々な背景を持つ彼らと過ごす中で、私たち自身、ひいては人々のアイデンティティを形成する要素に興味を持つようになりました。また大学1年生時、「Global Study Program 1」の授業内で中山大学とのオンライン講義を履修し、旗袍(チーパオ、チャイナドレス)について学んだことも影響しています。服装や衣服にとどまらず、より広い視点で人々のアイデンティティについて学びたいと考え、プログラムへの参加を希望しました。またこのプログラムを通して、私自身のルーツやアイデンティティについて改めて考えるきっかけとなりました。

この科目では毎回、指定された参考文献を読み、その内容をもとにディスカッションを行い、教授からのフィードバックを受けることができます。授業中で特に印象に残っていることは、中国の「差序格局(Cha-Xu-Ge-Ju)」に関するディスカッションです。これは中国、特に農村部の社会的関係を表す基礎的な特性で、家族や親しい人々との関係をどのように位置付け、どうやって広がっていくのかについて学びました。この概念では、社会的関係をまるで湖に石を投げる時にできる“波紋”のように考えます。その波紋の中心に自身が立ち、両親、家族、友人、など親しい人を内側にして、順番にそとの輪へと広がるように考えます。この概念は、私がこれまで考えていた人間関係の枠組みとは全く異なりっており、衝撃を受けるとともに、新しい視点を得ることができました。

また少人数科目であるため、"あなたはどう思うのか"とよく問われました。毎回緊張しますが、そこでの発言は否定されることはなく、たとえ言語化することが難しく言葉に詰まってしまってもきちんと最後まで挑戦できる環境でした。このような様々な意見を受け入れ、理解する環境に身を置けたことで、自分の意見をしっかりと伝える力が養われ、違いを知ることへの面白さを再確認しました。また、授業中に日本についての質問や日本人としての意見を求められることが何度かありました。自分の体験や意見が、日本人の体験として一般化・抽象化されすぎないよう考慮し、かつ文化的な背景の違いをどう表現するかが大きな課題でした。こうした授業内のディスカッションを通して、日本文化や日本人のアイデンティティについて改めて考える機会が生まれ、日本人としての自身を見つめ直すことが出来たと思います。

このプログラムの魅力は、単に学問的な知識を得るだけでなく、他者との交流を通じて自分の価値観を再考する貴重な機会が得られる点だと感じています。私はこのプログラムを通じて、中国社会やアイデンティティに対する理解を深めるとともに、自己と他者の関係性について新たな視点を得ることが出来ました。そして異なる文化や視点を持つ学生たちと意見交換を行う中で、物事を多角的に見る力を養い、視野を広げることができたと思います。これから受講を検討している方はは、異なる視点を学び、自分の価値観を再考する良い機会になるので、ぜひ参加を検討してみてください。